アップライトピアノを自然倍音列で調律してみた

このところ時間をみては制作している、12音のジャストイントネーションかつクロマチックな演奏ができる”HOLOFON”という、より演奏家向け、プロ仕様の倍音楽器の新たなピースがあるのですが、

その試作品を聞いて、音の響きに感動してくれた友達が、アトリエにあるピアノにこのチューニングをしてみたい、OK@
という話になり、

問い合わせること10軒余り、この変則チューニングを行ってくれる調律師さんをなんとか見つけてきてもらい、

考案のスケール、32倍音までの自然倍音列を、純正律の作法でオクターブ12音に落とし込んだ、HOLOFONオリジナルチューニングをピアノに調律した所、

結果、想像以上だったので書き留めておこうと思い記しています。

音の響き…
いわゆるドレミで作られた曲、そこから産まれるハーモニー
には、自分はもう直感的にいわば飽きていて、

例えばより複雑な倍音を含んだ金属音やシンセサイズされた電子音、アブストラクトな音の質感やテクスチャ、調律から自由な、声や世界の音楽、独特のゆるさのある曲、リズムや構造にフォーカスした曲、などを好んで聴いてきましたが、

この自然倍音列にジャスト調律したピアノを弾いていると、
まさに演奏するのを止められないほど身体に染み、、
共鳴により伸びる音の収束はどこまでも聞けるようで、まさにdeep listning  耳を深く澄まし、、
音の本来の調和というのはまさに”統合”なんだということを、身をもって体感することができた時間でした。

そして、居合わせた皆がその変調されたピアノの違いを直感的に感じ驚きを共有し、響きに深く耳を澄ます この聴覚の正確なセンシング能力の不思議さと、
そこから身体にフィードバックされる、確かに感じるフォーカス、統合される感覚

これが真の意味で心身に”良い”ものであるのは、例えば味覚に置き換えるとわかりやすく、
音の消え入るまで耳を澄ます行為は、”あと味の余韻まで美味い・・”というような感覚と同意で直感的なもので、
この自然倍音律のピアノの演奏がいつまでも止められなくなるのもこの辺りに理由があり、

la monte youngの well tuned pianoが5時間の演奏になっているのも理解できますし、そのマジカルな比率を直感的に打鍵し続ける長時間の演奏は、おそらく居合わせた人の心身のトランスフォーメーションを容易に招くだろうと推測できます。
例えば発達障害、統合失調症の人などにとってもこのフォーカスの感覚は、確実に魅力的なものになるでしょう

音というのは、薬が存在する前から、本来的にそういう力を持っているし、
響きというのは、これは実際に鳴る音の中にあって、どんな良い機材をしても録音に残すことが難しいもの

というのは80年代より時代の音楽を切り開いて国内のみならず宇宙の音楽の先端を更新し続けてきてくれたとある音楽家がアトリエに遊びに来てくれた時に残してくれた言葉ですが、

今回のピアノの調律はまさにその様なもので、
音は人にとって決して外的なものでなく、内的というよりは内と外のない一体的なものだということ
加えて上手に音と溶けるためには自然倍音列のチューニングがかなり効くということも確信となり、

また音が本来持っている可能性の一つ、
凡庸と考えそうになっていたハーモニーや調和というものを、本質から捉え直して活かすことの可能性もはっきりと見え、

数年にわたって掘り起こしている音律の深みとそれの楽器制作、の一つの成果をまた実感できる時間になりました。

音と治癒のような文脈は、経済的なロールも多く時には注意な所ではありますし、義務教育で誰しも受けてきた音楽教育、ーー正統な音楽というものを仮定することによって生まれている偏見や常識ーーサブカルチャーやアンダーグラウンドなどと等しく、この様な音楽療法なども偏った角度で見られることも多いような気もしますが、
しかし実際にholotoneの響きを聞いてもらった老若男女の意識のみならず、道まで開くという経験を次々としている昨今、
この辺りは、音をこよなく愛する一人として、引き続き実践と観察による塗り替え作業を続けていこうと考えています。

uneの楽器も色々な人に聞いてもらえるよう色々なところに足を運ぶ計画もありますし、instagramなどフォローしていただき、必要があればワークショップや楽器演奏、展示なども可能ですので、コンタクトからお気軽に声をかけてください。